ニキとモモが1つ1つの衣装を眺めていると、1つだけ装いが異なるクローゼットを見つけた。
「一華さん、この棚は…?」
「こちらは今回のデザインコンペでの作品ではないのですが…」
一華が説明を続けようとしたところで、一人の女性が現れた。
「こちらはかつて、リリス王国首相を務めたニーズヘッグ氏によるデザインです。」
「あら、フレデリーク。今年も来ていたのですね。ニキ、モモ、彼女はフレデリーク。カルファ王国連合図書館から来た、私の古い友人です」
「こんにちは、ニキとモモ。この燕尾服のことを知りたいの?」
「はい!」
フレデリークは燕尾服にまつわる話を始めた。
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この燕尾服の名前は「ワンナイト・ダンス」。
カルファの王侯貴族から舞踏会に招待されたニーズヘッグ。
前日に主催の貴族から贈られた大量の布切れと、一枚の手紙。
手紙には一言だけ書かれていた。
「最高の衣装を貴方に」
歓迎されていないことは理解できた。
ノーザンから舞踏会用のスーツを持って来ていたが、それでは彼らの思う壺だろう。
せいぜい到着と同時に「相応しくないコーデのものは帰れ」と言われるくらいだろうか。
もしくはリリス王国の威信に傷をつけるかもしれない。
何が彼を駆り立てたのか、本人にしかわからない。
ひとつだけ分かっていることは、たった一晩で布切れからこの燕尾服を仕立て上げたということだ。
ところどころにダイヤがあしらわれた、カルファ風のスーツ。
特に印象的なのは、色とりどりのマントだ。
キルトのようになっているが、カルファの王侯貴族がこれまで見たどのキルトよりも精密で美しい。
きっと彼らも舌を巻いただろう。
その衣装のデザインの美しさもさることながら、縫製の精密さや質感は、まるで代々カルファ王国の王族に伝わる衣装のようだ。
この燕尾服をきっかけに、彼はカルファ王国でもその名を轟かせるようになった。
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「す、すごいにゃー…。さすが実力でリリス王国の首相になっただけあるにゃ」
その隣で、ニキは複雑そうな顔をして燕尾服を眺めている。
しばらくして彼女は燕尾服から目を背け、重い足取りで次のクローゼットへと向かっていった。
(葉月一華さん主催のイベント、リリス王国デザイン学院学園祭参加作品)
デザイン学院2年のkontonです!
カルファ王国×ダイヤ♦のオリジナルセットコーデ「ワンナイト・ダンス」です!
ニーズヘッグ首相新任時代の逸話からインスピレーションを得てデザインしました!(ノリノリ) pic.twitter.com/VjB2bqtIlP— konton (@kont_on) 2018年8月20日
リリス王国デザイン学院2年生(多分首席)のkontonさんがニーズヘッグによく似合う燕尾服をデザインしてくださいました!
素敵すぎるフレテキまでありがとうございます…拝ませてください…🙏🙏🙏✨
ちなみに今回登場しているフレデリーク(Frederique)はある友人から名前を借りました。ありがとう💐